SBTi(科学に基づいた目標イニシアチブ)とは?科学に基づいた目標イニシアチブ、通称SBTiは、世界中の企業が最新の気候科学に沿った排出削減目標を設定するよう奨励する共同の取り組みです。この目標は、気候変動の影響を緩和するための重要な閾値である、地球の温度上昇を1.5°C以下に抑えることを目指しています。CDP、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)などの主要な国際機関が2014年9月に設立したSBTiは、企業が気候変動に関する行動を指導する上で重要な役割を果たしています。SBTiによって承認された目標は、科学に基づいた目標(SBT)と呼ばれます。SBTの採用動向世界的にも、日本でも、SBTの採用は増加しています。2023年には、日本のSBTi認定企業の数は600社を突破し、2024年現在も増加を続けています。中小企業のためのSBTSBTiは、中小企業(SME)が科学的根拠に基づく目標(SBT)を設定・達成するための中小企業版SBTを提供しています。この記事では、中小企業向けSBTの概要、利点、実施プロセスについて掘り下げて解説します。中小企業向けSBTの概要昨今の気候変動問題に対して中小企業が直面する特有の課題とリソースの制約を認識し、SBTiはSBT導入のための中小企業専用の認証を導入しました。中小企業向けSBTの特徴中小企業向けSBTは、参入障壁を低くするために設計されています。基本年限と目標年限の設定中小企業版SBTは、基準年と2030年という目標年を定めており、目標設定プロセスを簡素化しています。スコープ1と2の排出量に焦点を当てる直接排出(スコープ1)とエネルギー調達からの間接排出(スコープ2)に焦点を絞り、中小企業が管理しやすいようサプライチェーンからの排出(スコープ3)は対象から外れています。温暖化シナリオの選択中小企業は、1.5℃または2℃を十分に下回る温暖化シナリオのいずれかに目標を合わせることができ、コミットメントレベルに柔軟性を持たせることができます。認証費用の削減中小企業向けのSBT認証の料金は、一般の認証よりも大幅に低く、比較的安価に設定されています。簡素化された承認プロセス中小企業版SBTは、認証までの期間が速く、煩雑なプロセスはありません。参加資格中小企業版SBTを受けるには、排出閾値、部門別除外、財務指標で一定の基準を満たしている必要があります。基準は更新されることがあるため、最新の基準はSBT公式のホームページを確認する必要があります。中小企業にとってのSBT導入のメリットSBTの導入は、中小企業に多くのメリットをもたらします。ブランド価値の向上: 科学的根拠に基づく排出削減へのコミットメントを示すことで、中小企業の評判が高まり、環境意識の高い消費者やパートナーへのアピールが強化される。サプライチェーンへの貢献: 中小企業は自らの排出量を削減することで、サプライチェーン全体の削減に貢献し、より良いビジネス関係を育み、新たな機会を切り開くことができる。まとめ中小企業向けSBTは、中小企業が科学的根拠に基づく目標を設定し達成することで、中小企業は持続可能な未来に貢献するだけでなく、新たな成長の道を開き、市場でのポジショニングを高め、気候関連リスクに対する強靭性を構築することができます。持続可能性に向けた旅路は集団的なものであり、中小企業が果たすべき役割は欠かすことができません。環境省(2023)「SBT(Science Based Targets)について」